幼児からの囲碁
自分で考えることの出来る子供に育てる
★はじめに
囲碁は有史前4-5000年前から
あるといわれるゲームである。
現在では文化芸術振興基本法
により日本の伝統文化に指定され、
言語、民族、人種、性別、世代を超え、
ハンド・コミュニケーションとして、
世界100カ国以上の国と地域で
愛され親しまれている。
囲碁は集中力が身につき、
想像力を育くみ、
発想が豊かになる頭脳ゲームで、
医学的にも右脳を刺激し、
認知機能を高め、ストレス解消に
効果があることが認められている。
近年、子どもの情操教育、
知能発達における囲碁の効果も
注目されていて、囲碁を通した様々な
経験は子どもたちの「生きる力」を
養うよい機会だと考えられている。
★囲碁の効能
公益財団法人日本棋院によると
囲碁をすることにより、
様々な効能があるといわれている。
想像力や知的能力の向上以外にも、
相手を思いやる・負ける体験をする・
礼儀作法を体得するなどの感性教育の
面でも効能があるといわれている。
まず、第一に、
想像力が豊かになるといわれる、
盤上の交点なら
どこに打ってもよいという、
自由なルールで「かたち」を
作り上げていくことで、
他のゲームにはない創造性がある。
自分の頭で考え、
先を読むことによって
想像力が高まり、
発想を豊かにするといわれる。
第二に、
知的能力・生きる力が
身に着くといわれる。
囲碁を楽しむことで、
相手の動きや先などを読む「推理力」、
先を読むための「思考力」、
多くの選択の中から必要な手を選ぶ
「判断力」、「直観力」などの知能能力が
自然に身につく、
また、考えをめぐらす中で、
自然と集中力もつく、
また、囲碁ではいい局面もあれば、
苦しい局面もある。
苦しい局面を打開することで、
苦境を乗り切る力、
人生における「生きる力」
を養うことができる。
これらのことから囲碁は人間の根幹を
支える能力を育てることが
できるといわれる。
第三に、
囲碁はストレス解消の効果がある、
人間の脳は通常、左脳で計算・暗記・
論理的思考機能を受け持ち、
また右脳は感覚的・形や空間等の認識、
大局的視野でも
判断力を受け持といわれる。
人間は本来、右脳左脳の両方を
上手く使うことが大事だが、
一般的には左脳人間が多い。
囲碁は特に右脳を使うゲームで、
医学的にも、右脳を刺激し、
判断力を高め、ストレス解消に
効果があるとみとめられている。
第四に、
コミュニケーションの向上の効果が
あるといわれる。
囲碁は年齢や性別、
国籍などにかかわらず、
誰でも楽しむことができ、
見知らぬ同士でも囲碁を通じて
向き合えばすぐに仲良くなれる。
そのため、
現代社会で希薄になりつつある
家族、師弟、先輩等との世代を超えた
コミュニケーションに役立つ。
またパソコンやゲームの普及により、
現実の体験を経験することが
すくなくなった現代では、
囲碁を通して対等に向かい合い、
コミュニケーションを深めることで、
自分たちが他者との関わりの中で
生きていることを強く実感させてくれる。
第五に、
子どもの教育についてである。
囲碁は、先を読むことによって
「集中力」が身につき、
また全体を見据えた、
「バランス間隔」を養うことができる。
また、多くの選択肢から状況に応じた、
判断を必要とするため、物事の
価値判断をするための練習にもなる。
今の子供たちは、予測しきれない
将来を生きるため、
様々な場面において、
生き方を自分の力で決定していく
ことが必要とされる。
囲碁を通した様々な体験は、
子どもたちの「生きる力」を養う
チャンスになるともいえる。
また、幼児期に重要な数量概念の
基礎がきずかれる。
以上のことを踏まえると、
囲碁というゲームは幼児には
難しいかもしれない。しかし、
幼児期に囲碁をするからこそ
体得するものが、
あるのではないだろうか。
囲碁の中には、石を偶数・奇数に
わける作業や、対局の最後に、
数えやすくするために、
整地をする作業がある。
これらの作業は一対一対応を
理解していなければできないし、
陣地を数えるときは面積の大きさや
縦と横の長さを比べたりもする。
幼児期の基盤の時に、
囲碁をはじめることにより、
数量概念の形成にも何らかの
相乗効果を与えているのでは
ないだろうか。
★認知的・社会的発達
認知的、社会的発達に着目して
石が置いてある盤面を見て
別のものを連想する想像性、
目先の事だけではなく
先を見据えて次の手を
考えたりする認知的能力、
友達とのかかわりの中で見られる
対人的なもの、
以上の3つの分類に分けることができる。
★幼児の創造性
白と黒が置いてある盤面から、
まったく別の物に
見えることに気づくなど、
囲碁の技量とは別に、
幼児の想像性をみることができる。
囲碁をすることによって、
幼児の素晴らしい発想力や
想像力を見ることができる。
★囲碁における知的能力の向上
大石が取られるという、
辛い出来事の後でも、
本質的なところに目を付け、考える、
幼児のものの見方の、
柔軟性をものみることができる。
整地の作業では、
様々な長方形の面積を足し算して、
どちらが多いかを考えるなど、
盤面をしっかり見る力・そして数的な
知的能力が養われていることが分かる。
囲碁を打つことによって、
どのような状況下でも冷静に考え
判断するものの見方の柔軟性、
複雑な長方形の面積の対比など
数的判断力等が自然に養われる。
★対人コミュニケーション
友達とのかかわりあいの中で、
子どもたちの成長が見られる。
負けることを嫌がり、機嫌を損ねたり、
対局を放棄することもあった子が、
友達に囲碁を教えるために、
わざと負けてあげる姿が
見られる事例もある。
多くの対局を通して勝ち負けを
経験する中で、相手を思いやる力や
自重する力を得られるのでは
ないかと思われる。
★囲碁の効能
囲碁とは、
白と黒の石を19路×19路の
碁盤に置いていくゲームである。
簡単なルールさえ覚えれば、
現在流行っているカードゲームの
ような細かいルールをたくさん
覚える必要はない。
いたってシンプルなゲームである。
囲碁を打つためには、
石を取られないかなどの一つ一つの
石を見て、なおかつ盤面全体も見て
今の自分の状況を判断して
最善の一手模索していく、
1つの小さな石にとらわれていては、
最後の陣地を数えるときに
不利になるかもしれないし、
かといって要石を取られてはいけない。
その判断を自分の力で
しなければいけない。
そのため、先を読む力、
盤面全体を見る力・集中力などが
自然に身についていく。
あきらめずにもっとも効率の良い
最善の手を探すことで、
これらの力が身についていくのでは
ないだろうか。
★負ける経験
囲碁は、負ける経験ができる貴重な
伝統ゲームである。
昨今、運動会ですら1位を決めない
やりかたをしている。
負けることで今の自分のレベルを
知ることができ、
次は負けたくないと自分から努力する。
幼児期に努力したことは、
必ず今後その子にとって、
かけがえのないものになるだろう。
しかし、現在はそのような貴重な、
「負ける経験」をする機会が少ない。
囲碁は負けず嫌いな人ほど
強くなるといわれる。
かけっこなら、「早生まれだから」
「体格が違うから」などと負けた
理由はいくらでもいえるが、
囲碁は男女、年齢の差は関係なく
勝ち負けが決まる。
「年下だから・・・」と
言い訳することはできずに、
陣地が少なかったらはっきりと
「負け」だと目で確認できる。
このような負ける経験ができる
手軽な伝統ゲームは少ない。
また、囲碁は負けた悔しさを
ばねに努力したとき、
努力した分だけ成果が目に見える。
この対局はなぜ負けたかを検討し、
この手を打ったのが敗因なのだと
自分の中で整理ができる。
そして今度からは、
気を付けようと努力し、
自分自身で間違えた手を克服し、
成長する。
検討しなくても、
たくさん対局することによって、
だんだんと、
「この打ち方をするとあまりよくない」
と感じ取ることもできる。
小学校高学年になれば、
布石や手筋・詰碁などの本を読んで
勉強することもできる。
囲碁は、負けるという経験をして、
それをばねにして努力すると、
棋力の向上がはっきりとあらわれてくる。
このように努力がすぐはっきりと、
あらわれるものは、多くないはずだ。
是非、幼児期の時に負ける経験・
克服ができるように
生活の中に取り入れてほしい。
★ハンド・コミュニケーション(手談)
また、囲碁は、
ハンド・コミュニケーションというように
言葉がなくても伝わることがある。
外国人とまでいかなくとも、
大会等で初対面の人と対局し、
対局後仲良くなることがある。
近距離で小一時間相手の手を
考えながら対局するので、
高段者だと相手がある程度どういう
性格かまで分かるようになる。
幼児にはそこまでは、
わからないかも知れないが、
知らない人とでも
対局することによって、親しみが湧き、
対局後会話へとつながることが多い。
智樹君が通っている、
こども囲碁教室でも、
最初は知らない子どもばかりだが、
対局するうちに
仲良くなっていくようである。
このように囲碁には
ハンド・コミュニケーションとしての
効能がある。
囲碁を学ぶことで、
認知的・社会的発達に
関して多くの効能があることが分かった。
幼児期に経験することによって、
これらの認知的・社会的発達は
重要なものとなるであろう。
是非、幼児期のうちに、囲碁と出会い、
新たな可能性を
みいだすことをお勧めする。
論文 中島香織
ノートルダム清心女子大学
千秋ちゃん(6歳6月6日)
美陽ちゃん(4歳)
陽菜ちゃん(4歳)
百合子ちゃん (3歳)
陽高くん(6歳)、寛和くん(6歳)
寛和くん(5歳)
百合子ちゃん(6歳)、菫ちゃん(6歳)
陽高君、寛和君 (共に5歳)
衣美里ちゃん(6歳)
百合子ちゃん(5歳)
百合子ちゃん 七㊄三
衣美里ちゃん(4歳)
岳志くん、大竹先生、咲哉くん